ムジカコルプス 音楽は聴いている

2015/2/13

作曲家 宇佐美陽一さんの作品を集めたコンサート、ムジカコルプス 音楽は聴いている
があいれふホールで行われました。

コンサートの冒頭で私が演奏した

「冬」~ギター奏者のための~

3楽章の図形楽譜は活版印刷されて解説が書かれたパンフレットとセットでロビーで販売されました。

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左が販売されたもの、右は知り合ってすぐの頃に宇佐美さんから頂いたオリジナル。
この大きさでも本番で見るにはちょっと小さいので赤と黒二つに分けてA3版に。

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これはリハ終了時の写真ですが、本番では赤の方を縦に置いてみました(^_-)
赤と黒、どちらから弾いてもいいし、瓶を形取った線のどちらからスタートしてもいい、というのが作曲者、宇佐美さんからの指示なんです。

オープニングの曲だったのでコンサートの雰囲気を作る重責を担っていたのかもしれませんが、あまりそんな事は考えずに、ひたすらその時にしか生まれない演奏を心がけてみました。そうは言っても演奏者が一人で楽しんでいてもただの一方通行になるので、会場の様子を第三の目で感じながら、声を出す二楽章はセレクトする断片の数を少し減らしてコンパクトにしました。

リコーダーの大坪由香さん、神野和美さん、野田陽子さん、須藤千津子さんによる2曲目は細長い楽譜(クルクルと巻かれた様子はトイレットペーパーみたいでした^^;)をリング状に繋いだ周りを4人の奏者が静かに歩きながら演奏する

「森」~リコーダーの輪のために~

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あいれふホールの譜面台は磁石が着くか、という事を野田さんが数日前から気にしていた苦心の楽譜の置き方。
時に沈黙になるタイミングも発生しながら、しずしずとリコーダーの音が放たれていきます。
神社か能か、和のムードがムンムンしてきます。
リハの時に「雅楽みたいな感じがしますね」と宇佐美さんに言ってみたら「バレましたか^^;」と。雅楽のとある調子と関連があるそうです。

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リハの様子

前半最後は高橋加寿子さんのピアノによる

石の百合に

このコンサートでは宇佐美さんが解説をしながら進行していきましたが、作曲者からの言葉があると作品により深く入り込めました。

ドイツ留学中に、一輪のユリの花が毎日変化してやがて落ちていく様子を14の小曲の集合として書き記したもの。退廃的な印象を受けたのは、その当時起きたチェルノブイリの事故の暗い影でしょう。曲間の時間をたっぷりとった高橋さんの演奏にあいれふホールは何とも言えない緊張感に包まれました。

後半は私が昨年秋に熊本でお世話になった大村友樹さんのフルートによる

In meiner Herzenshand

でスタート。
コンサート前半の曲目は音数が少なく、「間」が多い曲でしたが、一転このフルートの作品は速いパッセージが多く、またフラッターやキーを叩くだけで音を出すなど特殊奏法もふんだんに盛り込まれていましたが、大村さんは驚異的な集中力で完璧に演奏されたようで宇佐美さんはたいへん感激されていました。

続いて現役桐朋学園大学4年生による弦楽カルテットで

Auris es hoert und zaehlt

9.11後に書かれたこの曲は祈りがテーマになっており、曲の最後は4人ともが同一方向を向くという動きが指示されていました。
そういう視覚的なものだけでなく、若いフレッシュな感性と鍛え込まれた完璧なテクニックが生み出すサウンドは、宇佐美ワールドを積極的に「自分たちのもの」として表現していく意欲を感じて、聴いていて何だか嬉しくなりました。若いっていいなあ

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リハの様子

その後2nd.Vnの小池彩夏さんと再びピアノの高橋加寿子さんが演奏する武満徹の

妖精の距離

を宇佐美さんがオイリュトミーで。
見える音楽、運動する音、というのを黄色を基調とした衣裳で私達の前で具現化してくれました。
音楽を勉強している人は宇佐美さんのオイリュトミーを一度見てみる事をお勧めします。音楽が見えてきますよ。
Vn.の小池さんの力みが全くなく、でも凛とした立ち姿は、もうそれだけで出てくる音楽が素晴らしい事を十分に予期させて、実際には予想をはるかに上回る超ハイレベルな演奏でした。
東京と福岡と距離が離れていて練習の時間は殆ど取れなかったと推測されるピアノの高橋さんとのアンサンブルも全く不安な所がありませんでした。

最後は
少年とふたりの飛天:迦夜と迦羅の物語
という現在制作中の絵本の中に出てくる竹笛の旋律をテーマにした

月ぬ みず

という曲を北海道から駆けつけたフレーデリケ キーンレさんのチェロ独奏で。
この絵本の絵(原画の一部がロビーに展示してありました)を描かれた としくらえみさんがお話を朗読してから演奏がスタート。
超ハイトーンと低音だけで書かれたこの曲は、時折舞台の床を足で踏み鳴らす指示があったり、最後のテーマの部分は舞台後方に用意されたもう一つの椅子に移動してから演奏するなど、昨年秋に北九州で初演されたばかりの最新作。
お話してみるとチャーミングなキーンレさんの気迫のこもった演奏でした。

最後は
としくらえみさんが描かれた墨絵から宇佐美さんがインスピレーションを受けて制作した図形楽譜「鳥になったエレジィ」を宇佐美さん自身がピアノで即興演奏。

時間が押していたので山内泰さんとのステージでのアフタートークは一旦中締めして、時間の許すお客さんと。

こうして宇佐美さんの「音楽から聴かれる」不思議な数時間は終わりました。

ロビーでは北海道のヘルツグリューネスさんのお菓子も販売されていました。

聴きに来てくださったみなさんありがとうございました。
宇佐美さん、演奏家のみなさん、スタッフのみなさんお疲れ様でした。

#6

投稿者: ギタリスト 橋口 武史

長崎出身で福岡に住む自然派クラシックギタリスト。

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