1.Etude Op.6-11(F.Sor)エチュード Op.6-11(F.ソル)
プロデューサーは私が大好きな曲の一つを一曲目に選んでくれました。
コンサートではアンコールでよく演奏していますので
違和感が全くなかった、と言えば嘘になりますが
今となってはこれが一曲目というのも悪くないな、と思っています。
フェルナンド・ソル(1778-1839)は、古典派ギター音楽において重要な作曲家である。30代半ば頃に故郷スペインからフランスに亡命した後、イギリスやロシアなどを旅して、61歳でパリに没するまで生涯に、作品番号63番までの作品を残している。それらは現在、初めてギターを手にする人からギタリストまで、広く愛奏されている。
ソルの多くの作品の中でタイトルに「エチュード」、あるいはそれに類する名前を持っている作品郡はいくつかあるが、単なる指の練習という域を通り越えて、鑑賞にも十分堪えうるものも多い。逆に、ともすればやや冗長になりがちなソルの作品の中で、コンパクトにまとめられ、古典的な美しさと、小粋な和声の使い方、ロマン派の時代を先取りしたかのような旋律の美しさを持ったエチュード集は、ソルの作品の中で最もソルらしい、と言えるかも知れない。
2.Tango en skai(R.Dyens) タンゴ アン スカイ(R.ディアンス)
雑踏と靴音に導かれる2曲目はお得意のタンゴアンスカイ。
これまたアンコールでよく演奏しています。
小学生の頃NHK-FMで福田進一氏が演奏しているのを聴いて以来
カッチョいい曲だなあ
と(特に母が)思っていましたが
年月を経て大学に進学して2年まで在籍させてもらったギターのサークルの部室にこの楽譜があるのを発見して
あっという間に暗譜してレパートリーにした曲です。
3.Lagrima(F.Tarrega)ラグリマ(F.タレガ)
日本語に訳すると
涙
聖母マリア様の涙だそうです。
泣いた所でどうしようもない、
全人類が抱える哀しみは
ありきたりなマイナー(短調)ではなくメジャーで始まります。
悲しいのよ〜
と泣き叫ぶより
かなしい
とポツリと、穏やかな微笑さえも浮かべながら
まっすぐに目を見つめられながら独白された方が
その悲しさが伝わることもある。
4.Recuerdos de la Alhambra(F.Tarrega) アルハンブラの想い出(F.タレガ)
作曲された当時は「祈り」というタイトルだったとも言われる
トレモロ奏法を駆使したクラシックギター不朽の名作。
スペインはグラナダにあるイスラム建築アルハンブラ宮殿を訪れたF.タレガが
中庭で贅沢にほとばしる噴水の様子を音にしたもの。
5.Sun burst(A.York)サンバースト(A.ヨーク)
ウィンダムヒルレーベルのアーティストでもあり、一時期ロサンジェルスギターカルテットに在籍したアンドリューヨークの名がクラシックギター界に知られるようになったのはこの曲をJ.ウィリアムズが演奏した事がきっかけ。
ウェストコーストのハイウェイを流しているかのような爽快な一曲。
6.Secret Love(S.Fain) シークレットラブ(S.フェイン)
武満徹の手になるアレンジ集「ギターのための12のうた」より。70年代のギター界に向けた編曲者本人の言葉を以下に。
“ギターは、音色変化に富んだ美しい楽器です。「小さなオーケストラ」とさえ言われるほどですが、機能の点ではかなり不自由な面を持っています。しかし、そのため反ってこの楽器は作曲者(あるいは編曲者)に、特殊な愛着と好奇心を喚ぶのでしょう。
私はギターという楽器が好きです。そして、自身のよろこびのためにこの「12の歌」を編曲したのですが、だがそればかりではなかった。率直に言って、私は、現在のギター音楽のレパートリーの狭さに疑問を感じもし、また不満も有ります。クラシックギター(殊に日本で)の世界が、「今日」との触れあいを失った閉ざされた状況にあるのは、限られたレパートリーを洗練された技巧で上手に演奏するだけの趣味に陥ったからだろうと思います。音楽は個人の好みや趣味から、また慰めから出発するものでしょう。でも、その地点に停まるものであれば、音楽はけっして生きたものとはなりえません。私は、大それた野心を抱いてこの編曲を試みたわけではありませんが、ギタリストたちの固定した風景にもうひとつの窓から別の風景を開きたいと考えたのです。
「12の歌」は、それぞれに高度な演奏技巧を必要としますが、それはまずなによりも柔軟な精神へのエチュードなのです。”
原曲はドリス デイ主演の映画「カラミティー ジェーン」の中で男勝りな主人公ジェーンが胸に秘めた恋心を唄ったもの。
7. Un Dia de Noviembre(L.Brower) 11月のある日(L.ブローウェル)
キューバの作曲家、ギタリストレオブローウェルが映画のために書いた曲。
晩秋らしくどんよりとした前半と、それでも流石にキューバ、強烈な日差しが眩しい中間部、またもの憂げなメロディーはカモメの鳴き声とともに
このあてのない一人旅の一応の終わりをみる。そしてそれは次の旅への始まりでもある
by takeshi hashiguchi