T …それはたまたまブリームさんからギターの曲を書いてみないかという話をうかがった時、旅行をしてニューヨークにいたんですけど、ニューヨークの近代美術館でパウル・クレーの素晴らしい展覧会があったんですね。僕は昔からパウル・クレーが大好きなんですけれど、あんなにたくさんの作品が一堂に会したというのは珍しい展覧会でした。その中で一つもう本当に好きな絵があったんです。そのタイトルがもちろんドイツ語で付けられていたんですけれども 英訳では”All in Twilight”というんです。小さな絵でしたけれども、それを見た時にその時僕はギターの曲を考えていたので、めったにないことなんですが、ハッとひらめいたんです。 この “All in Twilight” というのを書きたい。何かこう微妙な乳白色をしていました。僕の記憶の中にあるブルームさんの音の温度とその絵がぴったりだったんです。(現代ギター No.279 1989年1月号 p.40)